感想文5冊目『五色の魔女』は、レベル高いんだけどキャラに好感が持てなかったよ。
中世と蒸気機関が入り混じった本格ファンタジーもの。
国家戦力級の力を持つ5人の魔女の1人(と、その使い魔)が主人公。
魔女の1人の謎の死をきっかけに、残された魔女達が、
その首都を舞台に、宰相や軍隊を巻き込んで戦いを繰り広げる。
第1回集英社ライトノベル新人賞特別賞受賞作。
なんと言っても本書の売りは、魔女対魔女のバトル。
ネクロマンサー、格闘系魔女、ゴーレム使い、液体魔女(?)などが、
街を破壊しながら異形の戦いを繰り広げる。
正直なところ、世界観やキャラの個性、ストーリーは、
どこかで見たような感じで特に印象に残らなかったけど、
戦闘シーンの描写は新人とは思えない書きっぷりで迫力があった。
「んっつ!」とか「おおおおおお!」とかの多用はご愛嬌。
さてさて主人公は、やや毒舌系のネクロマンサー。
(やはり毒舌系・・・)
見た目はティーンエイジャーだが、本当は100歳以上。
露出の多い服、ふむふむ。
何度か「美少女」みたいな描写が直接的にされていたが、
これにはもう慣れてきた。
というか、これくらいしないとダメなんですよね、わかります。
なぜなら小説でも文学でもなく、ラノベなんだから。
でもって、主にとっての一番納得できなかったのがこの主人公だった。
理由は一つ、一般市民を平気で殺すんだよね。
反政府軍がたむろする酒場で、自分の使い魔に命じて、
ガトリング銃を乱射させるんだよね。
で、一般人も巻き込んでるけど、別にいいっしょ、みたいな。
これ、一般人を巻き込まない方法はいくらでもあったし、
そもそも反政府軍って、そんなに悪い奴らじゃない、という設定なの。
なのに無差別虐殺ですか。
そうですか、ふ〜ん。
いいんですよ、主人公が聖人君子じゃなくても。
ピカレスクは主も嫌いではないし。
主が好きな漫画『ヘルシング』とか、普通に民間人巻き込んで、
ヒハヒハ笑ってるからね、主人公のアーカード。
でもアーカードは、普通に異常者、じゃなくて異常吸血鬼だから。
五色の魔女の主人公、ジャッカルは、アーカードほど異常者ではない。
そりゃあ高い戦闘力を誇る人外の100歳オーバーの魔女だから、
普通じゃないし、そこに毒舌属性や攻撃性属性がある方が、
キャラも立って魅力的かもしれないけど、
無差別虐殺属性まで付け加えることに、何かメリットがあったのかな?
主には、その狙いはわからないね。
しかも、その描写の一部にでも、たとえば、
「そこに民間人の肉塊が混じっていることに気づき、「ちっ」と少女は舌打ちした」
の一文でもあれば、主はここに引っかかりはしなかったと思う。
でもどうやら、著者は、主人公が無差別虐殺するファクターを、
どうしても入れたかったようなんだよね。
書かなきゃなんとでも解釈できるのに、あえて、
・この酒場には民間人もいる
・いることを知っていてガトリング銃の乱射を命じた
という文章を入れてるんだよね。
入れなければ、「民間人はいなかった」ことにも「いることに気づかなかった」ことにもできるし、そうすることで何か困ることにはなるとは思えないんだけど。
この虐殺属性があるから、後半、主人公の孤独感や、使い魔の少年のいい話も、
素直に読めなくなったんだよね。
「タチの悪い無差別殺人者にそんな表情されても、ねえ・・・」
【勝手にラノベ分析】
・ファンタジーもの。そういえば何かの記事で、現実世界から異世界に入り込むファンタジーものの応募は不可だって書いてあったな。よっぽど多いんだろう。あ、これは純粋なファンタジーものだから平気。
・三人称。おや珍しい。
・主人公は高い攻撃力を誇る美少女の魔女。男は、脇役で2人ほど。
昔(●十年前)ならこの手の剣と魔法の物語を書く意欲があったのだけれど、
残念ながら、その時の少年の空想力(妄想力)は、もはや失われたようだ。
地名とか世界のルールとか、考えるの、超面倒臭い。
現役中2病には勝てないよ。
やっぱり、現代を舞台にした方がいいのかな。
以上。