感想文13冊目『トーキョー下町ゴールドクラッシュ』は池井戸潤だった
色々あってラノベ制作が手付かずになったが、そろそろ復活しようと思い、まず試運転がてら何冊か読み直そうと思った。
で、実際に応募する賞の受賞作を研究しようと考えガガガと電撃の過去受賞作を7冊大人買いした。その内の一冊。
おそらく、現代を舞台にして、主人公が学生ではないラノベを読むのは初めて。
それも参考になるかと思い、読んでみたのが第22回電撃大賞の本作。
さぞかしすごいんだろう、と思いきや、普通だった。
普通だった、の意味は、よくも悪くもである。
まず「悪くも」から。
内容は、はっきり言って池井戸潤の普及版というか、その、池井戸潤もどきというか、そんなんだ。ざっくりいうと、企業や証券をめぐる経済サスペンス。
ブログ主は、この世界にほんの少し近いところに住んでいるから書いてある内容に親近感があったが、果たしてこれが、いわゆるラノベ読者層に受け入れられるのかどうか疑問である。これが好きなら池井戸潤か真山仁を読むべき。取り立てて経済サスペンスとしての質が高いとは思えないし、キャラクターや世界観にエッジが立っているわけでもない。
次は「良くも」について。
文章のこなれ感はある。というか、この人本当に新人なんだろうか? 非常に読みやすく、「小説で10年食ってます」と言われても納得するレベル。すごくうまい、すごく面白い、というわけではないが、普通に読みやすく書き慣れている感じ。
アマゾンのレビューには「文章も最悪」みたいに書かれていたが、それほど突出して悪いとは思わなかった。もっと悪いのはざらにあるし、むしろ推敲に推敲を重ねた文章だと思う。
おそらく著者は40代以上だろう。
作品の舞台や登場人物、セリフの言い回しから、若さは感じられない。
ブログ主もその世代なので、この見立てはまず間違いない。
不思議なのは、なぜこれが大賞をとったか、である。
ケチをつけるつもりはないのだが、ラノベという感じはまるでしないのだ。
この著者にどんな可能性を感じて、どういう趣旨で、大賞を贈呈したのか。
そこが良く分からない。