よい子のラノベ教室

ラノベ作家デビューをたくらむ会社員が   読んだり書いたり

感想文3冊目『弱キャラ友崎くん』は勝間和代のラノベ化説。

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 この本は新人賞の受賞作ではなく、ある程度ベテラン書いたラノベ

なんでこの本を読もうと思ったのかというと、

ふとしたきっかけで、本書が某書店で一風変わった売られ方をしていると

小耳に挟んだから。

なんでも、ビジネス書(自己啓発書)として売り出されているとか。

 

どういうことか真相を確かめるべく取り寄せて見たところ、

マジでそうだった。

あるゲームだけ神級に強いけど、リアルには冴えない少年が、

そのゲームで2番目に強いリア充の女の子から、

「リアルの世界の攻略法」を学ぶという筋書き。

で、そのリアルの世界の攻略法というのが、自己啓発書のノウハウ。

たとえば、イケメンや美少女でなくても表情を変えれば印象は変わる、とか。

で、少女の指示に従い、主人公の少年が口角を上げる特訓をする。

 

うん、聞いたことがある。

勝間和代マッキンゼー時代、やってたやつだ。

確か、口角を上げるために、割り箸を加えて訓練したとか。

 

つまり、「自分を変える」「意識高い系」のハウツーを、

ラノベに持ち込んだってわけだ。

これはいいヒントになりそう。

 

ここ何日か「自分が書くなら、どんなテーマのものを書くのか」、

つらつら考えて見たんだけど、どうにも考えが収束しないんだよね。

で、この本を含めいろいろ読んで悩んだ末に、2つの結論にたどり着いた。

 

1つ。まったく新しい物語を考えようとしない。

これは何も、パクリをやろうぜって言っているわけではない。

先人が切り開いてきた道の先を、新たに切り開けばいいんじゃね?

という意味。

イノベーションとは、まったく無から有を産むことではなく、

今あるものから、新しい意味や価値を生み出すことと聞いたことがある。

それに、自分が考えた物語がまったく新しいものかどうかなんて、

検証しようがないんだよね。

さらに言えば、読者がまったく新しい物語を求めているとも限らない。

その点、『弱キャラ友崎くん』は、

ビジネス書の素材をラノベに持ってくることで新しい価値を生み出している。

これがヒント1。

 

もう1つのヒントは、やはり、大人には大人の戦い方があるということ。

ブログ主は、そこそこのおっさんだ。

臨場感あふれる学園描写や、淡い男女の恋話をリアリティを持って書くのは、

相当無理があるんですよ、実際。

そこで戦っては、つい最近まで学生だった若手作家に勝てるはずがない。

もちろん、社会人経験をそのまま書いてはラノベにならないんだけど、

そこで経験したこと、見聞きしたことをうまくラノベに活かせば、

自分のオリジナリティを出せるし、ネタもそこそこストックがある。

他者と差別化を図るには、ここは一つ武器になるだろう。

これがヒント2。

 

【勝手にラノベ分析】

・少年の主人公の1人称。基本的には冴えない少年。

・少女は、一見はつらつとした美少女だが、主人この前では毒舌。

 

まだ結論を出すには早いが、ヒロインに表裏を持たせ、

裏では毒舌(S)って設定は、鉄板というか王道かもしれない。

『ソラゴト』もそうだったけど、この設定は多そう。

自分の前でだけは素の表情を見せてくれる少女。

10代の男の子の大好物は、これだな。

 

ちなみに、今まで読んだ2作、つまり新人賞受賞作と違って、

そこそこ実績のある人のラノベは、やっぱり上手い。

文章のこなれ感もそうだが、話の展開も計算して丁寧に書いている。

この本でも、よく考えると強引な展開はあるんだよね。

女の子が「自分が尊敬するゲーマーがリアルでは弱キャラなのが許せない」

という根幹の設定も、まあ、無理があるんじゃない?

でも、そこに無理があってもそんなことは読者にとってどうでもいいことは、

なんとなくわかってきた。

それに、あまりそのことを感じさせない試合運びのうまさも本書にはある。

やるなあ、と思った次第。

 

新人賞作品だけでなく、

一定の評価を得ているラノベもたまには読んだ方が吉だね。

 

以上です