よい子のラノベ教室

ラノベ作家デビューをたくらむ会社員が   読んだり書いたり

新海誠推薦の脚本術を読んで見たでござる

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数日前に新海誠監督がツイッターで絶賛していた脚本の書き方の本。

『君の名は』は、基本的にラノベ映画だと思うので、何かの参考になるかと思い読んで見た。

いや、正直にいうとまだ読み終わってないんだけど(400P以上あるんだよ)、途中経過のご報告。

 

主も昔、この手の映画脚本の教科書や小説の書き方みたいな本は何冊か読んだことがあるので、その限界もよくわかってる。読んだからといっていいものは書けない。ただし、役に立たないわけではない。大事なこともそれなりに書いてある。

 

本書も、使い方次第ではラノベを書く役にたつと思う。

脚本の書き方なので、映画とラノベは違うんだけど、物語の進め方やキャラの設定などは、読んでいて勉強になった。

心構え的な話が多いが、実践的なテクニックの話もたくさん紹介されている。

ただ、多少この手の本を読み漁った人にとっては、重複も多いかもしれない。

個人的に良かった箇所だけ、いくつか共有します。

 

・私たちは登場人物によって泣かされ、笑わされるのであって、プロットではない。

・キャラクターに対する関心が失われた瞬間、物語に対する関心も失われてしまう。

・大事なのは読んでいるページで何が起こっているかではない。読んだ人の心の中で何が起きたか。

・使い古された表現を避ける有効な方法は、ジャンルを混合すること。

・主人公は待っていてはいけない。何かに反応するだけの主人公は嫌われる。

・あなたが書いたキャラクターがギリギリまで追い詰められたら何をするか、知っておいたほうがいい。

・どのページのどの部分でもお客さんを失う可能性がある。

・ある場面を抜き去っても物語が破綻しないなら、その場面は不要だ。

 

などなど。

ご興味のある方はご一読を。

 

確かに『場面設定類語辞典』はラノベ初心者の神ツールとなる

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3000円もするマニアックな本なのにバカ売れしてると話題になった本。

主も最初、その記事を読んで訳がわからなかった。

というか、タイトルを見てもなんの本かわからなかった。

脚本家とか小説家向けの本なのだろうけれど、そんなに売れるのかいな、なんて思っていたら2万部くらい売れてるとか。これは600円のラノベが10万部売れるくらいのインパクトがあるすごいことだ。

 

で、色々調べたところ、ラノベ初心者が結構買っているらしい、という情報を得た(=グーグルが教えてくれた)。

ほうほう、それは興味がある。

ということで高いけど「えいっ」と買ってしまった。

 

結論から言うと、これ、使えるわ。

例えば「地下室」と言うページを開くと、

 

【見えるもの】

 床の錆びついた排水溝、分電盤、カビた亀裂がうねるように入ったコンクリートの床

【聴こえるもの】

 上階で誰かがトイレの水を流しパイプの中でゴポゴポと流れる水、木の梁がミシミシと動く

 

といった感じで、そのシーンに登場人物がいたら見たり聴いたり感じたりするであろう場面設定のヒントがたくさん書かれている。

使い方は簡単。

自分の書いたストーリーに適当に混ぜ込めば、あら不思議、臨場感やリアリティが1・5倍に(笑)

本当なら作者が自分で「こんな場面では何が目に入る? 何が聴こえる?」と想像力を膨らませて書くところだけど、そこって、クリエイティブで楽しい創作というより、どちらかというと、やらないといけない作業なんだよね(と主は考えてる)。

物語を進めたいし、キャラの会話も進めたいけど、場面設定はそんなに積極的に考えたりしたくないわけで、そして考えても薄っぺらくなったり、忘れてしまったりして、ついついおろそかになりがちだと思う。

そこをアシストしてくれるのが本書。

これで、物語や会話に専念できるというもの。

もちろん、プロの作家がこれに頼っているとしたら、なんだかなと思うが、初心者はこれで十分でしょう。主はガンガン使うよ。

 

ちなみにアマゾンサイトでは「翻訳書だから日本の例に合わない」とか書いてあったけど、それはちょっと想像力を働かせればいいと思う。

例えば「高校の廊下」の例を見ると「ハンドバックを落とした瞬間に見られたくないものが飛び出す(タンポン、コンドーム、コカインの吸引器)」ってあるけど、まあ日本では最後のは見ないと思うよ、そりゃあ。

でもさ、ここは「ああ、廊下でカバンを落とすことってあるよな。日本だとなんだろう。学校に持ってきて見られたら恥ずかしいものって、コミケの漫画とか?」くらいの想像力は働かせてもバチは当たらないでしょ。

 

っていうか、丸写ししようと思うなよ(笑)

感想文12冊目『異世界食堂」は予想以上にグルメ本だった

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すんません。

「なろう」の存在を知りませんでした。

新人賞受賞作だけじゃなく、今売れてるラノベも読もうと思い、

最近話題の「グルメ系」を読んでみようと思ったのが本作。

投稿サイト「なろう」から商業出版され、コミック化やアニメ化され、

大成功を収めている。

そういうルートもあるのか、と勉強になりました。

 

で、読んでみた感想ですが、これはラノベとかファンタジーとかというより、

グルメ小説ですね。

5対5か6対4くらいでグルメとファンタジーの比率が構成されているかと思いきや、8対2か9対2でグルメですわww

ちょっと驚いた。

 

今、グルメ系ラノベファンタジーが空前の人気ですね。

異世界食堂」とほぼ同じと目されるのが「異世界居酒屋のぶ」。

こちらも人気ラノベだけど、著者がうつ気味とかツイッターで拝見しました。

成功したら成功したで、色々悩みがあるのでしょう。

あとラノベじゃないけど「ダンジョン飯」も同系列ですね。

ただ「ダンジョン飯」は、スライムの調理方法とか、それなりにファンタジーだけど、

異世界食堂」は、あんまりファンタジー関係ないグルメ小説だからね。

これ、ファンタジーじゃなくて、昔の偉人とか、宇宙人とかでもいいと思う。

第1章「メンチカツ」、第2章「エビフライ」だから。

 

なぜ「異世界食堂」や「異世界居酒屋」がこれだけ売れるのか。

主なりに考えた結論は、ラノベ読者の高齢化。

15年前、西尾維新の「クビキリサイクル」や涼宮ハルヒが出てきてラノベという言葉が騒がれ始めた頃は、きっとグルメ系ラノベは流行らなかったと思う。

その頃の読者は中高生〜ハタチくらいで、当然ながらグルメよりも恋や冒険に関心のある年頃だから。

そしてそうした読者のうち、一部はラノベから卒業したが、以前としてラノベ読者のままの方も多く、彼らは気づくと30歳から40歳になっている。

その年になると受け入れられるんですよ、グルメものがw

ラノベ読者が、「孤独のグルメ」の気持ちを理解できる年齢になったんです。

 

ラノベ読者の高齢化、というのは一つのヒントになりますね。

どうも「中高生に受けるもの」と先入観にとらわれがちですが、必ずしもそれが唯一の答えではない。30〜40歳向けのテーマも、狙い目かもしれません。

特に、作者がその年齢に近いなら、無理に学園ものを頑張って書くより、無理がないかもね。

 

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

初めてラノベを書く際に留意すべき3つのこと

10冊も読めば「だいたい」ラノベについて肌感覚で理解できた。

逆にこれ以上読んでも、何かの域値を超えて開眼するということはなさそうだ。

何事も、最初に一つ何かを動かさないことには、始まらない。

だから、とりあえず書き始めることにした。

と言っても、最初の何ページかを書いたのではなく、「こんなシーンも書こうかな」という、ストーリーの途中の、カットしてもどうでもいいところを、ザッと2000字くらい、2時間くらいで殴り書きした。

 

そうすると、自分なりにいくつかの気づきがあった。

(多分、今の主にだけに該当する気づきだと思われる)

 

一つ。

やはりキャラクターの性格は、はっきりと極端に設定しておくべきだ。

ここが「もやっ」としていると、登場人物のセリフや行動が、すべて「書き手」になってしまう。

男だろうが女だろうが子供だろうが大人だろうが、同じ思考&言動の「書き手」がたくさん登場してきて、クローン同士のやりとりが始まる。

これがなかなか気持ち悪い(笑)

まあ所詮登場人物の「中の人」は漏れなく「書き手」になるわけだが、気を抜いてると、地味でつまらない「書き手」の掛け合いになるというわけだ。

そうならないためにキャラ設定はしっかりやっておくべきで、なおかつ、極端なほどしておくべきということ。ちょっとくらい色付けしても、なかなかキャラが立たないから。

 

二つ。

上記の一つ目とやや矛盾するけれど、「キャラ設定はあとで変えてもいい」くらいに考えて、とりあえず書き進めた方がいい、ということ。

キャラクターの個性が売りのラノベなら話は別だが、そこそこストーリー重視のものであれば、あとでキャラクターの性格や設定を変えても、多分大丈夫。

というか、最初から完璧なキャラ設定をして、ぴったりのセリフや行動をさせようと思っても無理だと思う。少なくとも主には無理。

だから、まずストーリーを追う形でざっと話を作って、あとでキャラのセリフや行動にエッジを効かせるのがいいと思う。書きながら「こいつは、もっとお笑い系にしよう」「こいつはもっとお姉さんキャラにしよう」という具合に。話を進めて言ったり、キャラ同士を絡ませていく過程で、見えてくるものもあるだろう。

最初から完璧な人格(キャラ)を作ってからスタートしようと思うと、多分、いつまでたっても書き進められないか、ちょっと書き進めてヤメての繰り返しになりそうだ。

 

三つ。

上の二つ目に関連するが、とりあえず、書き上げること。

つまらなくても、矛盾があっても、書き上げる。

これが大事。

主も少し誤解していたが、ラノベ(小説全般?)を書くという行為は、頭にある「出来上がった」物語をダウンロードする作業ではない。「頭の中で80点、少なくとも60点の物語を構想してから書き始めよう」なんて思っていては一生書けない。

60点でも30点でも、10点でもいいから、まず「叩き台」をひねり出す。

そこから何度も叩き上げ、60点、70点にしていく。

これが小説を書くという「作業」だ。

おそらく、4〜5回は書き直すだろう。

 

最初の2〜3回位は、そもそも話の辻褄があっていないとか、そういうレベルで。面白い、面白くない以前のレベルで、「小説として成立していない」ものを、なんとか「ルール違反にはなっていない」レベルにする作業が必要だ。人体で言えば、骨格づくりに相当する。「よく考えたら鎖骨がなかった」ということに、この段階で気づくこともあるはずだ。

 

筋書きとして見るに耐えるものになったら、次は「より面白くする」ために、1〜2回書き直す。「こんなシーンも入れた方がいい」「このシーンは意味がなかった」とか、場合によってはキャラが増えたり、減ったり、性格が変わったり。この作業を経てようやく、書き手も「この作品は笑いのエッセンスが多いな」とか「シリアスだな」とか、「俺は意外にラブロマンスを書きたかったのだな」とかがわかってくる。

逆に言うと、ここまで、書き手も正直、どんな作品かはわからないと思う。そんな無責任な、と思うかもしれないが、おそらくこれは正しい。ベテラン作家ならこのあたりのコントロールは可能なのだろうが、初心者作家にとっては、そんなもんだろう。人体で言えば、肉付けとか、髪の毛をつけたりと言ったところ。これを経て「ああ、結構健康的なんだな」「思ったよりセクシーだな」「身長があるね」と言うのが見えてくる。

 

最後にブラッシュアップだ。

気の利いた(と書き手が思っている)セリフ、シーンを付け加えたり、ダサい部分を削ったりする。人体でいうと、表情であったり、化粧であり、洋服を着たりの段階。つまり、最終的な見た目だ。

極端な話、ここでテキストすべて書き換えてもいいと思う。

物語や必要なシーンは、前の作業までで終えている。つまり、本質的な構造や材料は出揃っている。それをどう読み手にデリバリーするか、それがここでの作業だ

必要なら、最後、文章をフルリニューアルしてもいいだろう。

 

作家として未熟なら、自分が鬼編集者となって、何度もダメ出しをして作り上げると言う方法がある。

しかし、どんなダメ原稿でもいいから、原稿がないと、鬼編集者もアドバイスしようがない。

なので、とりあえず、10点の原稿でも書くこと。

初心者には、まずこれが大事だと思う。

感想文11冊目『ハナシマさん』は、なぜ受賞できたのかわからない・・・

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第10回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞」受賞作。

本作品で、主は2回度驚かされた。

 

1回目は、これが新人賞を受賞したことだ。

 

本当に申し訳ないと思う。

人様が書いた作品に難癖をつけるのは、望むところではないし、やるべきでもない。

しかし、思わず言わずにはおれないのだ。

「審査員は、これのどこを評価されたのでしょうか?」

 

物語は、ホラーというか、サスペンスというか。

バラバラ猟奇殺人と、心霊ものと、学園ものが合体したような作品。

最初は、ちょっと興味があった。

恋愛ものでもコメディでもキャラクターものでもないラノベは久しぶりで、

なおかつ主はホラーには一家言持つ者なので、少し楽しみだった。

 

駄菓子菓子、、、、

 

期待はずれだった。

途中でそんな気配はしたが、これでも頑張って「最後のどんでん返しで一気に巻き返すのではないか」などと思い、読みきった。

なぜ期待外れなのか。

著者が未熟者だからとしか言いようがない。

作品として完成度が低い。

と、一冊も書いたことがないライトノベル一読者は思った。

 

何がしたいかわからない、と言うのが全体的な感想。

思わせぶりな「ふり」が、最初から散々出てくる。

でもそれが全部、大したことがないか、投げっぱなしかで、面白くない。

物理法則を無視しているから、トリックや謎解きが面白いわけではなく、

本来ならハナシマさん(=トイレの花子さんみたいなもの)の超常現象っぷりが本書の味噌になるはずなんだけど、ハナシマさん、たいして出番もないし、そんなに興味深い存在でもないし、なんだろう、出来の悪い小道具みたいな感じ。

 

その一方で、黒幕的なマッドサイエンティストがいて、その片腕の戦闘力が高い設定のクールビューティがいて、それと因縁浅からぬ少年がいて、でもどれも謎を残していると言うか、中途半端な説明だけで思わせぶりなことしか言わないから、なんだろう、どこかで見たようなシーンを切り貼りして「大作が一丁あがり」みたいに勘違いした作品になってる。

怖くもなければ、キャラクターが魅力的でもなくて、話も破綻してるし、読み方というか楽しみ方が最後までわからなかっら。

ラストで、ハナシマさんが補足の説明をするのには、呆れて失笑した。

 

だから、これが受賞したことが驚いたことの一つめ。

2つ目は、これの第2作が出ていたこと。

まじか。

どういう意図で続編だしたんだ?

面白かった? 売れると思った?

 

わからん。

感想文10冊目『埼玉県神統系譜』を途中で読むのをやめた3つの理由。

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記念すべき感想文10冊目は、第9回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞。

新人賞受賞作だから読もうと思ったのもあるけれど、

実は主が書こうと考えているラノベの切り口が「コンサルティング」で、

この本も「潰れかけの神社を立て直す」のが主軸のようだから

参考になるかと思い読んで見た。

結論から言うと、大変残念ながら、半分くらいで読むのをやめた。

 

これまで読んだ10冊のラノベのうち、途中でやめたのは『通常攻撃が2回攻撃で全体攻撃のお母さんは好きですか』だけ。ただし『通常攻撃〜』は、趣味が合わなかったから(年齢的な意味で)「あとは若い人で楽しんでね。おじさんはここで失礼するよ」的な放棄だったのに対し、本作の場合は、単純に、面白さがわからなかった。

 

一番目の理由は、話の進展が遅いこと。

90ページくらい読み進めたが、主人公が謎の神(少女)と山登りをして、普通に帰ってきただけ。そこで第1章が終わるのだが、その章で得られる進展やカタルシスは、ほぼ無いに等しい。

逆に言うと、ここまでで十分面白いと感じた人は、次に進めるのだろうが、主は残念ながら進めなかった。

 

その理由として二番目に、文章のタッチが合わなかった。

主人公(男)の一人称のラノベだが、文章のタッチが、読んでいて面白いと思わなかった。

その原因は大きく2つある。

一つは、主人公(著者)の笑いのセンスと合わないこと。

なんと言うか、いちいち大げさで、うるさい。魅力的で無いのだ。

一昔前なら「それがラノベだ!」と押し切られたら納得したかもしれないが、

10冊読んだ経験から、それは嘘だと今なら言える。

それに、わざとなのか、難しい言葉をたくさん使おうとする。

最初は「神道ものだからかな?」と思ったが、違うね、これは著者が自分の知っている言葉をこれ見よがしに使っているだけだ。全然効果的でない。

それに、ギャグもやや古く、切れ味が悪い。

だから、ページの会話部分以外は、ほとんど飛ばして読んだ。

取れ高の少ないラノベなのだ。

 

面白く無いと思った理由その3、話がそもそも破綻してる?

最後まで読んで無いから、実はストーリーについて語る資格はない。

でもね。

倒産しかけの神社を立て直すために、神と神主が、絵馬に書かれた願い事を叶えることで、信者の信仰を集め、再起を図る、というグランドデザインは最初で解説されるから、そこはわかりましたよ。

そこまではいい。

でもさ、最初のミッションが「暑い日が続くから暑さを緩和してほしい」って何?

神も「最初から天候の願いに手を出すとは大胆だな」みたいなセリフを言ってたけど、

で、てっきり撤回するのかと思ったけど、このミッションに取り組むのよね。

 

おいおい。

気候を変えることの方が、神社の再建より簡単ってどういうことなの(笑)

 

例えば「●●大学に合格したい」とか「●●さんを彼女にしたい」とか、そういう願いを神&神主で叶えてあげて、じわじわ信徒を増やす、って展開ならまだ理解できるけど、最初に地球の気候をいじってしまえる力を見せつけられたら、「そらボロ神社の再建なんて朝飯前だろ?」と思うよ。

・・・いや、まだその力を見せつけられたわけではない(=読んでない)から、その後の展開は実は違うのかもしれないが、一瞬でもそちらの方に進んだだけで、登場人物そのほか世界観に、主はついて行けなかった。

 

あとがきで「面白い話が書きたくなって、書いた」とあった。

ラノベを一冊も書いたことがない主が、あえて突っ込みますよ。

 

多分あなたの書きたかったのは、面白い話ではなく、面白い文章でしょうし、

ノリノリでそれを書いたのはわかりますが、

その文章もあまり面白くないような気がします。

感想文9冊目『いでおろーぐ!」が今のところ暫定1位と感じた3つのポイント

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第21回電撃小説大賞銀賞受賞作。

 

・・・やられた。

ちきしょう、面白いじゃないか。

新人のデビュー作がこのクオリティなのか。

世の中、侮れない。

 

主はラブコメが、それほど好きではない。

なので「反恋愛主義青年同盟」の美少女が「恋愛放棄を叫ぶ」と言うあらすじを読んだ段階で、「はいはい、どうせそう言いながら恋愛するんでしょ?」くらいに考え、それほど期待せずに読んだ。

革命闘争のガジェットが面白いと感じたのと、学園もののリサーチをしたいと思ったこと。この2点が読んだ理由であり、つまんなければ途中で次に行く予定だった。

そして見事にオルグされた(笑)

 

自分なりに、なぜこんなに面白いと思ったか、整理しておこう。

 

その1、主人公へのスムーズな感情移入

主は少し反省している。

ラノベの主人公(男)は、あくまで主要キャラ(女)の狂言回しであり、物語の進行上は必要であるが、まあ、それほど重視すべきものではないと思っていた。

しかしその考えは改める。

主人公、大事だわ。

主人公は、読者にとって、ラノベという異世界の「目」の役割を果たすのだが、本作の主人公は実に居心地が良い「目」なのだ。あまり目立ちたくない、そこそこかっこいい少年という点では『ようこそ実力至上主義へ!』の主人公とたいさないが、あっちは読んでいてイライラしたのに対し、こっちは実に楽しい。

それほど尖ったキャラ設定でもないし、切れ者でもない小市民だけど、根はいいやつだ。こんな程度でしか表現できない主の筆力がもどかしいが、美少女がいなくても、この主人公でご飯4杯はいける。

「あるある」「その気持ちわかる」

という男ゴコロに、すごく寄り添っているのだ。だから無理なく受け入れられる。

(ちなみに「」「」を縦に連続で使うのも、この著者のテクニックのようだ)

主人公の男の、いわばMC力によって作品の印象が変わるんだな。

この点の共感度というか、世界への入り込みやすさはピカイチだ。

 

その2 奇抜ではなく意外なストーリー

いや、基本的には当初の予想どおりなんだよ。

「反恋愛主義」と言いつつ、やっぱり恋愛するのは。

でも、話の展開がなかなか面白くて、「え、どうなるの?」と、ついついページをめくってしまう。これはうまい。

ネタバレになるが、途中で神様(JSの姿)が出てくる。

その段階で一度本書を放棄しようかと思ったけど(まじで)、実に自然な形で馴染んでくるのだ、これが。いや不思議。

で、主人公はヒロインの「反恋愛主義」運動の同志となりつつ、実は神の手先となってその運動を阻止するためにヒロインを恋愛に陥らせる工作員となる。

主人公も「よくわからなくなってきた」とぼやくのだが、この入り組んだ展開が、なぜか無理やり感がなく、コミカルに楽しく読める。

反恋愛の革命運動に身を焦がす美少女とJSの神様との対決なんて、まあ、飛び道具だ。

それを使えば「一発ネタ」としては楽しいかもしれないが、普通は途中で破綻するか、飽きる。

本作が秀逸なのは、それらがうまくビルトインされており、世界観に飽きたり破綻したりするどころか、むしろ「え、そう来るの?」「どうなるの?」と引き込まれるところ。

飛び道具をぶっ放して終わり、ではなく、それをうまく使っているのだ。

 

その3 仕事が丁寧

結局、主人公が魅力的なのも、ストーリーに引き込まれるのも、

作者がこの作品を非常に繊細に、丁寧に作り上げたからだと思う。

話自体は、まあ、本当は大したことがない。

登場人物も、特別魅力的ですごいというわけではない。

でも一つの話として、実に生き生きしていて、生命力がある。

そう感じるのは、話の展開、セリフ、人物描写を、非常に丁寧に書き進めているからではないだろうか。

おそらく、何度も推敲し、完成度を高めていったと思われる。そうでなければ、これだけ「スルっ」とその世界に入ることはできないと思う。

変なヒロイン、変な設定、変な神様が出てくるのに、無理なく読めるのは、相当緻密に文章が考え抜かれているからだと思う。

 

すごい話をしてやろう。

すごいキャラを考えてやろう。

それも大事だが、もっと大事なこともある。

究極的には「読んでいて心地よい」ことが最強の武器であり、「すごい話」「すごいキャラ」は、読者が求めるものの1つにすぎない。

 

以上