よい子のラノベ教室

ラノベ作家デビューをたくらむ会社員が   読んだり書いたり

感想文10冊目『埼玉県神統系譜』を途中で読むのをやめた3つの理由。

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記念すべき感想文10冊目は、第9回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞。

新人賞受賞作だから読もうと思ったのもあるけれど、

実は主が書こうと考えているラノベの切り口が「コンサルティング」で、

この本も「潰れかけの神社を立て直す」のが主軸のようだから

参考になるかと思い読んで見た。

結論から言うと、大変残念ながら、半分くらいで読むのをやめた。

 

これまで読んだ10冊のラノベのうち、途中でやめたのは『通常攻撃が2回攻撃で全体攻撃のお母さんは好きですか』だけ。ただし『通常攻撃〜』は、趣味が合わなかったから(年齢的な意味で)「あとは若い人で楽しんでね。おじさんはここで失礼するよ」的な放棄だったのに対し、本作の場合は、単純に、面白さがわからなかった。

 

一番目の理由は、話の進展が遅いこと。

90ページくらい読み進めたが、主人公が謎の神(少女)と山登りをして、普通に帰ってきただけ。そこで第1章が終わるのだが、その章で得られる進展やカタルシスは、ほぼ無いに等しい。

逆に言うと、ここまでで十分面白いと感じた人は、次に進めるのだろうが、主は残念ながら進めなかった。

 

その理由として二番目に、文章のタッチが合わなかった。

主人公(男)の一人称のラノベだが、文章のタッチが、読んでいて面白いと思わなかった。

その原因は大きく2つある。

一つは、主人公(著者)の笑いのセンスと合わないこと。

なんと言うか、いちいち大げさで、うるさい。魅力的で無いのだ。

一昔前なら「それがラノベだ!」と押し切られたら納得したかもしれないが、

10冊読んだ経験から、それは嘘だと今なら言える。

それに、わざとなのか、難しい言葉をたくさん使おうとする。

最初は「神道ものだからかな?」と思ったが、違うね、これは著者が自分の知っている言葉をこれ見よがしに使っているだけだ。全然効果的でない。

それに、ギャグもやや古く、切れ味が悪い。

だから、ページの会話部分以外は、ほとんど飛ばして読んだ。

取れ高の少ないラノベなのだ。

 

面白く無いと思った理由その3、話がそもそも破綻してる?

最後まで読んで無いから、実はストーリーについて語る資格はない。

でもね。

倒産しかけの神社を立て直すために、神と神主が、絵馬に書かれた願い事を叶えることで、信者の信仰を集め、再起を図る、というグランドデザインは最初で解説されるから、そこはわかりましたよ。

そこまではいい。

でもさ、最初のミッションが「暑い日が続くから暑さを緩和してほしい」って何?

神も「最初から天候の願いに手を出すとは大胆だな」みたいなセリフを言ってたけど、

で、てっきり撤回するのかと思ったけど、このミッションに取り組むのよね。

 

おいおい。

気候を変えることの方が、神社の再建より簡単ってどういうことなの(笑)

 

例えば「●●大学に合格したい」とか「●●さんを彼女にしたい」とか、そういう願いを神&神主で叶えてあげて、じわじわ信徒を増やす、って展開ならまだ理解できるけど、最初に地球の気候をいじってしまえる力を見せつけられたら、「そらボロ神社の再建なんて朝飯前だろ?」と思うよ。

・・・いや、まだその力を見せつけられたわけではない(=読んでない)から、その後の展開は実は違うのかもしれないが、一瞬でもそちらの方に進んだだけで、登場人物そのほか世界観に、主はついて行けなかった。

 

あとがきで「面白い話が書きたくなって、書いた」とあった。

ラノベを一冊も書いたことがない主が、あえて突っ込みますよ。

 

多分あなたの書きたかったのは、面白い話ではなく、面白い文章でしょうし、

ノリノリでそれを書いたのはわかりますが、

その文章もあまり面白くないような気がします。

感想文9冊目『いでおろーぐ!」が今のところ暫定1位と感じた3つのポイント

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第21回電撃小説大賞銀賞受賞作。

 

・・・やられた。

ちきしょう、面白いじゃないか。

新人のデビュー作がこのクオリティなのか。

世の中、侮れない。

 

主はラブコメが、それほど好きではない。

なので「反恋愛主義青年同盟」の美少女が「恋愛放棄を叫ぶ」と言うあらすじを読んだ段階で、「はいはい、どうせそう言いながら恋愛するんでしょ?」くらいに考え、それほど期待せずに読んだ。

革命闘争のガジェットが面白いと感じたのと、学園もののリサーチをしたいと思ったこと。この2点が読んだ理由であり、つまんなければ途中で次に行く予定だった。

そして見事にオルグされた(笑)

 

自分なりに、なぜこんなに面白いと思ったか、整理しておこう。

 

その1、主人公へのスムーズな感情移入

主は少し反省している。

ラノベの主人公(男)は、あくまで主要キャラ(女)の狂言回しであり、物語の進行上は必要であるが、まあ、それほど重視すべきものではないと思っていた。

しかしその考えは改める。

主人公、大事だわ。

主人公は、読者にとって、ラノベという異世界の「目」の役割を果たすのだが、本作の主人公は実に居心地が良い「目」なのだ。あまり目立ちたくない、そこそこかっこいい少年という点では『ようこそ実力至上主義へ!』の主人公とたいさないが、あっちは読んでいてイライラしたのに対し、こっちは実に楽しい。

それほど尖ったキャラ設定でもないし、切れ者でもない小市民だけど、根はいいやつだ。こんな程度でしか表現できない主の筆力がもどかしいが、美少女がいなくても、この主人公でご飯4杯はいける。

「あるある」「その気持ちわかる」

という男ゴコロに、すごく寄り添っているのだ。だから無理なく受け入れられる。

(ちなみに「」「」を縦に連続で使うのも、この著者のテクニックのようだ)

主人公の男の、いわばMC力によって作品の印象が変わるんだな。

この点の共感度というか、世界への入り込みやすさはピカイチだ。

 

その2 奇抜ではなく意外なストーリー

いや、基本的には当初の予想どおりなんだよ。

「反恋愛主義」と言いつつ、やっぱり恋愛するのは。

でも、話の展開がなかなか面白くて、「え、どうなるの?」と、ついついページをめくってしまう。これはうまい。

ネタバレになるが、途中で神様(JSの姿)が出てくる。

その段階で一度本書を放棄しようかと思ったけど(まじで)、実に自然な形で馴染んでくるのだ、これが。いや不思議。

で、主人公はヒロインの「反恋愛主義」運動の同志となりつつ、実は神の手先となってその運動を阻止するためにヒロインを恋愛に陥らせる工作員となる。

主人公も「よくわからなくなってきた」とぼやくのだが、この入り組んだ展開が、なぜか無理やり感がなく、コミカルに楽しく読める。

反恋愛の革命運動に身を焦がす美少女とJSの神様との対決なんて、まあ、飛び道具だ。

それを使えば「一発ネタ」としては楽しいかもしれないが、普通は途中で破綻するか、飽きる。

本作が秀逸なのは、それらがうまくビルトインされており、世界観に飽きたり破綻したりするどころか、むしろ「え、そう来るの?」「どうなるの?」と引き込まれるところ。

飛び道具をぶっ放して終わり、ではなく、それをうまく使っているのだ。

 

その3 仕事が丁寧

結局、主人公が魅力的なのも、ストーリーに引き込まれるのも、

作者がこの作品を非常に繊細に、丁寧に作り上げたからだと思う。

話自体は、まあ、本当は大したことがない。

登場人物も、特別魅力的ですごいというわけではない。

でも一つの話として、実に生き生きしていて、生命力がある。

そう感じるのは、話の展開、セリフ、人物描写を、非常に丁寧に書き進めているからではないだろうか。

おそらく、何度も推敲し、完成度を高めていったと思われる。そうでなければ、これだけ「スルっ」とその世界に入ることはできないと思う。

変なヒロイン、変な設定、変な神様が出てくるのに、無理なく読めるのは、相当緻密に文章が考え抜かれているからだと思う。

 

すごい話をしてやろう。

すごいキャラを考えてやろう。

それも大事だが、もっと大事なこともある。

究極的には「読んでいて心地よい」ことが最強の武器であり、「すごい話」「すごいキャラ」は、読者が求めるものの1つにすぎない。

 

以上

 

感想文8冊目『ようこそ実力至上主義の教室へ』が個人的に受け付けられない3つの理由

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主はよく知らないんだけど、ラノベ界ではフアンが多い著者の作品。

CMも相当打たれたようで書店でもオススメされるなど、

話題になったラノベらしい。

 

主も「ラノベを書くなら、学園カースト的なものにしようかな」と考えていたところで、物凄く参考になると思い読んでみた。

読んでみた、が・・・・・・・

正直、受け付けられなかった。

アマゾンレビューを見ても、主と同じような感想が半分くらいだったので、

その受け付けられない理由は、あながち、的を射たものだと思う。多分。

 

理由その1 話の展開が超遅い、というか後半まで展開しない。

300Pほどあるが150Pまではほぼ話が進まない。

キャラ設定やキャラ同士の関係を、ダラダラとした描写で延々と綴っている。

タイトルの「実力至上主義の教室」がかいま見えるのは、後半に入ってから。

これは辛いですよ。

「理由その2」に関係するが、もしキャラが魅力的で感情移入できるなら、

このダラダラ描写もまだ受け入れられたかもしれない。

でも主にはダメだった。

誰一人「いい」と思うキャラはおらず、むしろイライラした。

何度途中でやめようかと思ったことか。

歯を食いしばって最後まで読んで、なぜこんなに展開が遅いのかわかった。

いや、本当は薄々気づいていたんだけど。

つまり、もともと何巻も続ける予定だったので、本書はプロローグ的な扱いなのだ。

アマゾンレビューにも、この本の熱烈な読者からのこんな書き込みがある。

 

「1〜2巻は正直辛いけど、3巻から面白くなる。見切ったら勿体無い!」

 

いや、ちょっと待てよと。

だったら3巻まとめて1000Pの本として出版してよ。

あるいは「上中下」巻にしろよ。

そうすれば、「上だけ読んで文句言うのは、俺が悪いな」ってなるから。

単体の商品としては、どう考えても、この1冊はひどい。

たとえ長い物語の序章的な1冊にするとしても、もう少しこの1冊の完成度や満足度を高める努力、工夫の余地はあるはずだと思う。そうした作品はたくさんある。

その点、この本は著者や出版社の甘えが見える。

 

理由その2 キャラが嫌い

丸々一冊キャラのおしゃべりに費やしたわりには、キャラに魅力を感じなかった。

むしろ不愉快だった。

この辺りは好みの問題だからしょうがないが、不愉快に思った理由を書いておこう。

まず主人公。

冒頭で「ぼっちで友達ができない」と悩むわりには、実はイケメンランキング5位でクラスの美女ベスト2からなぜか積極的に声をかけられ、相当勉強もできてキレ者(?)であると言う設定が後半わかってくる。

「実力スーパーだけど底辺や目立たない人生を愛するイケメン」「美女が勝手に話しかけてくる、でもどうでもいい」と言う設定はラノベ界の一つのテンプレだが、これは主は、好きじゃない。自分がそうじゃないからと言うこともあるが、ぶっちゃけムカつくんだ(小者)

そうありたい願望を満たすラノベなのかもしれないけど、それで「友達ができなくて困る」とか言われても、「はあ?」としか思えない。

あとヒロインも、毒舌(出た!)なんだが、なんだろう、今までに読んだキャラの中でも特に不愉快。まあ、それはそれで成功していると言うことかもしれないが、「つん」の裏の「デレ」がない?ので、単に性格の悪いやつ。

性格の悪い毒舌の美女がラノベの鉄板テンプレであることに異論はない。

でもなんだ、この「拾いどころ」のない不愉快さは。

主人公にも共通するが、なんか理屈っぽくて、人間が矮小なんだよね。

人助けしないことの意味のロジックをつらつら口にして「はい論破」みたいな。

申し訳ないが、主はそう言うのに魅力を感じない。

イキがったガキのたわごと。

そして、そう言うガキが「実力者」と言われる世界観は、ダメなんですよ生理的に。

 

理由その3 表現、文章が1世代古い

生徒が女教師に「今日は生理?」と聞いたり、「女子とエッチして〜」とか、

なんか昭和チックで、おっさんが書いたラノベ感丸出しなんだよな。

2015年刊行とは思えない。

キャクターの「設定感」「セリフ」が、昔のPCゲームそのままみたいで、

さすがにそんな話し方今はしないだろう、と言うのが随所に出てくる。

 

 

とまあ、いろいろ受け付けられない理由を述べたが、

最後にもう一つ付け加えることがある。

主が持っている本の奥付には「第10刷」と書いてあり、

本シリーズは6巻まで続いていることだ。

つまり、売れており、フアンもいると言うこと。

これは事実だから否定できない。

 

こう言うのが好きな人もいるんだ、と言うことは忘れないようにしようと思う。

 

以上

キャラクターは、わかりやす過ぎるくらい極端に個性的に

ラノベを5冊、ラノベに近しい本を2冊ほど読んだところで、

一旦、ここまでの気づきを総括してみる。

 

その1 キャラクターは極端に、マンガチックに

たとえば「かわいい」「美少女」くらいの表現はバンバン使う。

時には胸の大きさも強調する。

それをしないで魅力的に書ける筆力があるなら別だが、

そうでないなら、そうした修飾語を多用してもなんら問題なし。

 

そして性格は、マンガ的に極端に「振れて」いて丁度いい。

わかりやすいツンデレ

わかりやすいお嬢様キャラ

わかりやすい元気娘。

極端な、あるいは大胆な行動を平気でとる。

とにかく、アイコンとしてわかりやすい、エッジが効いたキャラにする。

「実際にいそう」な人を描く必要はない。

 

そしてなぜか主人公の周りには美女だらけ。

そして一番かわいい子が、なぜか主人公を意識する。

「そんな偶然の出会いあるかよ」

「そんな御都合主義の展開あるかよ」

なんて言ってる俺には、俺がこう言ってやる。

「それ誰得?」

 

そう、ラノベは読者に夢を与えるものでなくては。

コメディか、シリアスかはどちらでもいいけれど、

日常では体験できない出来事、出会えない魅力的な人物、

そうしたものが求められる。

主の小さな頭で考えると、どうしても小ぢんまりと、

あまり魅力的でない人物や場面が出てきがち。

主の日常を小説にすると、そりゃあ主人公は地味でもてないさ(涙)

そんな話は誰も読みたがらない。

だから、ありえないキャラ、ありえない展開がいいんだよ。

 

書くときは、ちょっとネジを2〜3本飛ばして、

あっちの世界に入って、ノリノリで書くべし。

もちろん、テーマによっては、守るべきルールもある。

例えば物理法則を無視していいかといえば、守った方がいいだろう。

でも、そのほかのほとんどは、好き勝手にやった方がいい。

細かいことはいいんだよ。

要は、面白くて、そのラノベの世界にずっといたい、と思えるような作品であれば。

誰も窮屈で地味な、リアルに近い非リア充の話は求めていないんだってば。

 

以上

感想文7冊目『か「」く「」し「」ご「」と「』はラノベっぽい小説だけどそもそもその両者の違いはなんだ?

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『君の膵臓を食べたい』で一躍人気作家となった住野よるの新作。

ラノベだけ続けざまに読むと、井の中の蛙になる。

というのは屁理屈で、ぶっちゃけ疲れるから、少し違うものも読んでみようかと、

今話題作を手に取ったわけ。

 

というわけで最初の1話だけ読んだけど・・・、

・・・これラノベじゃね?

一人称で、軽い感じで、読みやすい。

高校生の青い日常を、非常に共感できる視線と描写で描かれている。

 

主は基本的にラブコメラブロマンスは読まないし苦手なんだが、

いい話を読んだなあ、と、心がほっこりした。

話題になるだけはある。

 

で、宣伝文には「青春小説」って書いてあるんだけど、

これってラノベだよね?

ラノベの定義は何か、と問われても適切な答えは持ち合わせていないが、

これが「ラノベではない」という根拠もあまり見当たらない。

 

美少女は出てくる。

ちょっと現実離れしたキャラ設定の美少女。

コミカルな展開。

内気な主人公の一人語り。

 

まあ、ラノベの大賞受賞作も「あまりラノベっぽくない」と審査委員にコメントされたりしているくらいだから、その境界は曖昧なのかもね。

誰か明確な違いがあれば教えてほしいです。

 

以上

感想文6冊目『勇者に期待した僕がバカでした』はいいね! これ好き!

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第10回小学館ライトノベル大賞の審査員特別賞受賞作。

あれ? これレベル高くない?

すげえ楽しめたんだけど。

これで審査員特別賞なの?

大賞はどんだけすごいんだコレ。

個人的には、これまで読んだ5冊のラノベで一番好きなやつ。

 

ざっくりまとめると、社畜ブラック企業をネタにしたファンタジーもの。

主人公が属する魔王軍が、いわゆる企業体になってる。

役職的には、中間管理職。

新人社員に振り回されたり、上司に気を使ったり、

サラリーマンの悲哀が描かれている。

魔王軍も、コンペで仕事を取ったり、生々しい。

 

キャラクターがいいんですよ。

主人公は狂言回しの役所だから、それほどキャラが立ってるわけではないけど、

その部下のギャル風魔術師の、ギャルっぷりが、まず可愛らしい。

でもって、役員クラスの四天王が、またそれぞれ個性的。

 

話の展開もうまいんだな。

冒頭から「勇者が棍棒を購入した」という噂で職場(魔王軍)がざわつくんだけど、

そのシチュエーションがおかしくて。

 

なんだろう。

まあ、薬にも毒にもならない話といえば、そうなんだけど、

そしてそれは『通常攻撃が全体攻撃で2回攻撃のお母さんは好きですか?』と同じということなんだけど、『通常攻撃〜』は途中で読めなくなって、『勇者〜』は最後までどころか、続編も買いたいとさえ思ってしまったのは、果たしてなんの違いなのか。

世界観の合う、合わないって、こういうことなんだろな。

 

【勝手にラノベ分析】

・主人公は男性、若い中間管理職。基本的に「振り回され」キャラ。

・サブ主人公が新人社員(魔女)。今時のギャルで、腹たつんだけど憎めない。

・他のキャラも魅力的だが、キャラのやりとりだけでなく、ストーリーもなかなか読ませる。まあ、愚にもつかない話なんだけど、主はこういうの、好きなんだな。 

 

個人的にはすごく好きで、レベルが高いと思うんだけど、

これが大賞ではなく審査員特別審査賞になったのは、

やはり、ちょっと社会人っぽいテーマだからかな。

主は社会人歴が長いから楽しく読めるし、審査員もそうだろうけど、

中学生、高校生がどれくらいこれを楽しめるかは、ちょっとわからない。

だから大賞じゃないのかもね。

でも、続編も出てるから、十分ヒット作なんだろうな。

 

これが受けるなら、今主が考えてるテーマも受けるかもな、と思った。

 

以上

感想文5冊目『五色の魔女』は、レベル高いんだけどキャラに好感が持てなかったよ。

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中世と蒸気機関が入り混じった本格ファンタジーもの。

国家戦力級の力を持つ5人の魔女の1人(と、その使い魔)が主人公。

魔女の1人の謎の死をきっかけに、残された魔女達が、

その首都を舞台に、宰相や軍隊を巻き込んで戦いを繰り広げる。

第1回集英社ライトノベル新人賞特別賞受賞作。

 

なんと言っても本書の売りは、魔女対魔女のバトル。

ネクロマンサー、格闘系魔女、ゴーレム使い、液体魔女(?)などが、

街を破壊しながら異形の戦いを繰り広げる。

正直なところ、世界観やキャラの個性、ストーリーは、

どこかで見たような感じで特に印象に残らなかったけど、

戦闘シーンの描写は新人とは思えない書きっぷりで迫力があった。

「んっつ!」とか「おおおおおお!」とかの多用はご愛嬌。

 

さてさて主人公は、やや毒舌系のネクロマンサー。

(やはり毒舌系・・・)

見た目はティーンエイジャーだが、本当は100歳以上。

露出の多い服、ふむふむ。

何度か「美少女」みたいな描写が直接的にされていたが、

これにはもう慣れてきた。

というか、これくらいしないとダメなんですよね、わかります。

なぜなら小説でも文学でもなく、ラノベなんだから。

 

でもって、主にとっての一番納得できなかったのがこの主人公だった。

理由は一つ、一般市民を平気で殺すんだよね。

反政府軍がたむろする酒場で、自分の使い魔に命じて、

ガトリング銃を乱射させるんだよね。

で、一般人も巻き込んでるけど、別にいいっしょ、みたいな。

これ、一般人を巻き込まない方法はいくらでもあったし、

そもそも反政府軍って、そんなに悪い奴らじゃない、という設定なの。

なのに無差別虐殺ですか。

そうですか、ふ〜ん。

 

いいんですよ、主人公が聖人君子じゃなくても。

ピカレスクは主も嫌いではないし。

主が好きな漫画『ヘルシング』とか、普通に民間人巻き込んで、

ヒハヒハ笑ってるからね、主人公のアーカード

でもアーカードは、普通に異常者、じゃなくて異常吸血鬼だから。

 

五色の魔女の主人公、ジャッカルは、アーカードほど異常者ではない。

そりゃあ高い戦闘力を誇る人外の100歳オーバーの魔女だから、

普通じゃないし、そこに毒舌属性や攻撃性属性がある方が、

キャラも立って魅力的かもしれないけど、

無差別虐殺属性まで付け加えることに、何かメリットがあったのかな?

主には、その狙いはわからないね。

 

しかも、その描写の一部にでも、たとえば、

「そこに民間人の肉塊が混じっていることに気づき、「ちっ」と少女は舌打ちした」

の一文でもあれば、主はここに引っかかりはしなかったと思う。

でもどうやら、著者は、主人公が無差別虐殺するファクターを、

どうしても入れたかったようなんだよね。

書かなきゃなんとでも解釈できるのに、あえて、

・この酒場には民間人もいる

・いることを知っていてガトリング銃の乱射を命じた

という文章を入れてるんだよね。

入れなければ、「民間人はいなかった」ことにも「いることに気づかなかった」ことにもできるし、そうすることで何か困ることにはなるとは思えないんだけど。

 

この虐殺属性があるから、後半、主人公の孤独感や、使い魔の少年のいい話も、

素直に読めなくなったんだよね。

「タチの悪い無差別殺人者にそんな表情されても、ねえ・・・」

 

【勝手にラノベ分析】

・ファンタジーもの。そういえば何かの記事で、現実世界から異世界に入り込むファンタジーものの応募は不可だって書いてあったな。よっぽど多いんだろう。あ、これは純粋なファンタジーものだから平気。

・三人称。おや珍しい。

・主人公は高い攻撃力を誇る美少女の魔女。男は、脇役で2人ほど。

 

昔(●十年前)ならこの手の剣と魔法の物語を書く意欲があったのだけれど、

残念ながら、その時の少年の空想力(妄想力)は、もはや失われたようだ。

地名とか世界のルールとか、考えるの、超面倒臭い。

現役中2病には勝てないよ。

 

やっぱり、現代を舞台にした方がいいのかな。

 

以上。